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子どもたちの絵【SKPレターから】
/ さっかーせんせい日記
『子どもたちの絵』
皆さんのお子さんはご自宅で絵を描きますか?1~2歳くらいのお子様なら「絵」というよりはグルグルだったりテンテンだったり、なぐり描きに近いようなものではないでしょうか。それが2~3歳くらいになると、「あら、何かを描いているのね」と次第に分かるようになり、それがなんだか人の顔のようではありませんでしたか。そしてその顔から手のようなもの、足のようなものがにょきっと出ていませんか。そして3~4歳くらいになるとしっかりと顔と胴体、手、足が描かれ、ようやく「まぁ、ママを描いてくれたのね」と誰が見てもそれが人だと分かるようなものになったはずです。中には、すでに写実的な絵を描いてしまう子も現れたりします。
大人から見れば何を描いているのか分からないお子様の絵でも心配しないで下さいね。こうした絵を描いていく過程はご自身のお子さんだけではなく、実は全世界(日本だけではなく全地球的に)共通のものなのですよ。決していい加減に描いているわけではないのです。
前述の顔から足や手が出ている絵を「頭足人」と言います。子どもにより様々な頭足人を描きます。顔と足だけだったり、足(手?)が頭の上から出ていたり、頭足人の初期の絵だと太陽みたいに何本も手や足のような放射線が描かれていたりと本当に様々なのですね。
<坂幼年少組の子の典型的な頭足人の絵です。率直になんかかわいいですよね>
なぜ子どもは頭足人を描くのか、なぜ全世界共通なのかを研究している人は数多く諸説あります。「顔に注目しているから説」「頭部と胴の未分化説」「知っているものを描く説」「先天的記憶説」※などがあるそうですが、こうした偉大な研究者をさて置いて、僅か30年だけ子どもたちの近くにいる小職な私ではありますが、子どもたちにはヒトはこう見えているから頭足人になってしまうのではないかと思っています。それは記憶と未分化の双方が相まっているからなのではというものです。
二足歩行する前の四つ這いの生き物を正面から見た姿(先天的記憶)と胴と足が一体化して見えて(未分化)いるのではないかなと単純に思っています。
<こんな感じに見えてしまっているのではないかなと。だから胴はいらないから描かないんじゃないかな>
まだまだ答えの見つかっていない分野です。難しく考えるとキリがないですね。難しいことは研究者に任せることとして、私たち子どもに関わっている大人は、子どもたちが描いていく絵が発育発達的に見て誰もが通る道なのだということを知っておくことでしょう。知っていれば、「もう、うちの子はどうしてこんな絵になってしまうのかしら…」「ほら、よく見て描きなさい!」とか目くじらを立てずに見守ることができますものね。他の子と比べなくとも済みますものね。
<坂幼年中組の子の絵です。ほらね、ちゃんと胴体が描かれてきましたよ>
<坂幼年中組3学期ニジイロクワガタの絵。写実的な絵です。聞けば虫が大好きとのこと。色の使い方もお見事!>
子どもたちの絵に触れる時、私たちに求められるのは純粋に子どもたちの不思議な想像力や色彩の見事さに感嘆し、共感してあげることなのかなと思います。それだけで子どもたちの筆は進んでいくことでしょう。子どもの想像力は無限です。
byさっかーせんせい
※皆本二三江著「お絵かきの想像力」春秋社