今月号は理事長だよりです。【のびのびつうしん10月号から】

 / 園長だより 

実は(もちろん多くの方がご存知ですが)さっかーせんせいは坂戸幼稚園の理事長でもあるのです(エヘンっ)。と言いましてもトイレの詰まりを直したり、事務のお仕事をしたり、何でも屋さん(笑)です。さて、今月はそのさっかーせんせいのおたよりです。

 

運動会の見方

 

2学期の大きな行事、運動会が行われます。坂戸幼稚園の運動会は、全員揃っての練習からは始まりませんのは保護者皆様ももうご存知のことと思います。子どもたちは9月の保育から、運動会へ向けての遊びの中でゆっくりと運動会を感じていきます。園庭のロープ引っ張りっこ、リレー遊び、飛び降り台からのジャンプチャレンジ、学年混ぜこぜのパラバルーン等々。保護者様からしてみれば「あれ、これで大丈夫なのかな」と不安に思われる時期もあるかもしれませんのは重々承知しています。

 

やり方、ルールを上意下達的に教え、行わせれば保育者としてはとてもやり易いのは想像に難くありません。保護者様のお子様の育ちへの願いを顧みずに言うのであれば、その保育はとても「簡単」なものになりますが、それでは子どもの「気づき」「学び」「気持ち」の萌芽や伸びを期待することは低くなってしまいます。それは「先回り」をして、子どもたちに「答え」を先に渡してしまっているからです。そして、子どもたち自らの気づきや学びを導くには「待つ」ことがどうしても求められます。けれども保育の中でこの「待つ」ことはとても難しいことなのです。子どもが感じようとしている情緒はその時々で一人ひとり異なりますし、その一人だけでなくクラスや学年には集団という大勢も存在しているからです。どこまで「待てば」いいのか、どのように「待てば」いいのか、子どもという「個」を育てながら、子ども“たち”という集団も育てていく、運動会へ向けての保育に限らず、毎日の幼児教育保育で先生方が最も頭を絞ることのひとつなのですね。

 

して運動会は勝負あり、競争あり、成果結果が目に見えて分かりやすいものです。出来るようになったことや勝ったこと、上手くいったことは、大人には喜びであり、子どもには大きな自信となり次の一歩を踏み出すきっかけにもなります。一方、成果結果が目に見えてわかりやすいだけに、私たち大人が気を付けなければならないのは「子ども同士を比べない」ということです。その年齢により発育発達の概観はあるものの「あの子ができるのだからうちの子も・・・」という見方は、言葉にして直接ぶつけることはないにしても、親御様の心情を子どもはとても敏感に感じ取り、心を後ろ向きにしたり、逆にその期待に応えることだけが行動の動機付けになってしまったりします。だからこそ、決して忘れてはならないのが、常々園長が口にしているプロセスの大切さです。一人ひとりの子どもたちが通ってきたプロセスなのです。どんな思いを抱きながら、どんな風にして、今の姿にたどり着いたかを理解し、心から共感し、ほめ称えてあげること、それが側にいる大人の最も大切な役目ですし、子どもの自己肯定感や自己効力感といった自尊感情を育てるのだと思っています。

 

運動会は年間のひとつの行事に他なりませんが、普段の保育と密接につながっている大切な行事、子どもたちを大きく育てる、保育者も深く考えながら取り組む行事なのです。親御様にはお子様の一挙手一投足に一喜一憂、ご家族でその姿を楽しみにする行事ですが、こうした見方も頭の片隅に少し残していただきながら応援していただければ嬉しく思います。今年こそは青空の下で「秋空に笑顔の花を咲かせられる」運動会になりますように!

もうひとつ運動会

月のあそカレの日が、市内小学校の運動会と日程が重なってしまっていたため急遽中止としました。けれども先生方の勤怠の関係で出勤であったこの日、せっかく出勤しているのだから「小学校の運動会で卒業生や来年就学する新一年生のかけっこを応援しに行こう!」と手分けをして各小学校に赴きました。

 

私もいくつかの小学校を急ぎ足ですが巡りました。当日の天気予報で、ほとんどの小学校が徒競走を中止にするか午後のプログラムに移動していました。最も卒業生と目を合わせたり、ガンバレ!と声を掛けてあげられたり、「うわぁ、さっかーせんせいだ!」と喜んでもらえる競技なのでとても残念・・・。肩を落としてしまいました。

 

けれども落ち込んでばかりではいられません。リズムやダンスでは、学年の中に卒業生を見つけると、幾重にも並んで参観されている親御様の最後尾から、隙間を狙って「これでもかっ」というくらい腕を振って猛アピールです。周りの親御様は「この人、なんなん?」と思われたことでしょう。

 

そんなちょっとした隙間から私を偶然にも見つけてくれた子どもたちは色々な表情を見せてくれます。緊張して強張った顔が緩んだり、「どうして居るの?」とびっくりしていたり、照れるように少しはにかんだり、喜色満面で隣の卒業生に教えたり(おーっと今は集中して踊ってぇ)。その一つひとつに在園していた頃やあそカレの時の彼ら、彼女らを思い出して嬉しくなり、腕振りがさらに大きくなってしまうのです。

 

援。本人も気付かず人知れず届ける応援の仕方もあるでしょう。けれども「頑張って!」「応援してるよ!」と、声は届かずともその気持ちを渡すには、とても自分勝手とは承知してはいますが、手を振って、目と目が合ってこそだと思っています。人と人とのコミュニケーションも一緒です。来年はどの小学校の運動会に向かおうかな?行ける限り続けたいと思っています。

理事長 浅見 斉