園長だより8月「おしゃべり・・・思考の育ち」「好きなコトを自分のために」

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おしゃべり・・・思考の育ち

トシトと降る雨といらめっこしながら「まだかなぁ」とつぶやいている子どもたちは、雨が上がると「先生、いい?」と戸外に飛び出していきます。ボール遊びをするにはチョット不都合な園庭も、泥遊びには格好の遊び場となります。ドロケーキを作ったり、水たまりに砂場用の乗り物を走らせたり、水たまりを遊び仲間にして上手に遊びを展開していきます。少し前までは雨が上がると「大変、急いで園庭の水取りをしなくちゃ」と駆け出していた私たちもゆったりと安心しています。それは・・・以前なら靴のまま水たまりに入ってしまったり、夢中になるあまりズボンや上衣を泥だらけにしてしまっていた年少組さんも、本当に上手に遊べるようになってきたからです。

 

「何でもないこと」のように思われるかもしれませんが、これはとても「すごいこと」のひとつです。場の状況や周囲の様子や思いを取り込み、自分なりに思考して、行動を選択できることや、先を見通しながら行動ができること、すべてはこれまでの失敗も含めた経験からの学びと育ちの姿です。

 

先日の公開保育でも、様々な場面でお子様の成長をお感じいただけたことと思います。両日とも沢山のご参観を頂きありがとうございました。

 

て、タイトルにある通り、子どもたちが具体的に「できるようになったこと」だけでなく、子どもたちの内面、思考の育ちを感じるエピソードを記したいと思います。

 

子どもたちが遊んでいる日中に、道の草取りをしていました。そうした時、よく子どもたちは私に話し掛けてくれます。たいていは「園長先生、何してるの?」といった言葉から始まる「おしゃべり」は、見たことや考えたこと、家での出来事や楽しかった経験等、多岐に広がります。

 

砂場付近の草取りをしていた時、年少組のE君がフェンス越しに「はい」と椿の葉を渡してくれました。おそらくは私の掃除の手伝いをと思ってくれたのでしょう。「あっ、椿の葉っぱだね。丈夫でツルツルしているね」と話していますとO君が葉をむしり取り私に渡してくれました。私は「落ちている葉っぱはいいけれど、枝に付いているのを取ってしまうと可哀想」「なんで?」と側にいた年中組のHちゃんが尋ねます。「生きているから」「Hちゃんもエイッて体のどこかを引っぱって取られたら嫌でしょう」と話しました。

 

けれど、ふと思いました。私の手には雑草があり、私は地面から生きている草を抜いていたのです。私は子どもたちに伝えました。「抜いて(取って)いい葉っぱとダメな葉っぱがあるって難しいね」と。その場には年少組の子が3名、年中組の子が2名いて、私の言葉に「うん」と深くうなずいていました。

 

今日の年中組のUちゃんとのおしゃべりです。私がトンネル滑り台下の落ち葉を取っているとUちゃんが言いました。「ねえ園長先生、雨が降るとどうして(地面に)穴が開くの?」穴とはアスレチックの木の隙間から雨水が同じ場所に落ちたために出来たものです。「わぁ、Uちゃん、すてきなことに気付いたね。どうしてだと思う?」と尋ねると「雨が(おんなじ所に)落ちるから」「(雨が)いっぱい降ると穴が大きくなるね」とUちゃんは答えました。

 

どもたちが生活の中で、実に色々なことに気付き思考しているのがおしゃべりから伝わってきます。つい、何かをしている、あるいは活発に活動しているという側面を取り上げがちではありますが、子どもたちのおしゃべりをしたがっている気持ちとつぶやき、声、言葉を拾い上げられる自分でありたいと強く思います。

 

これから始まる夏休み、お子様と過ごす時間とおしゃべりをたくさん楽しんで下さいね。一学期間のご理解とご協力に感謝申し上げます。大変ありがとうございました。

 

好きなコトを自分のために

日、たまたまTVをつけましたら、小学生アスリートが、世界や日本で活躍している一流選手にチャレンジする番組をやっており、私は思わず見入ってしまいました。番組自体は刺激的でもあり面白く、頑張る子どもたちの姿に「すごいなぁ」と素直に驚きもしました。

 

その後夕飯の支度をしながらあれこれと考えているうちに少し心配になってきました。何が?・・・それは来年のオリンピックを前にこうした番組が増えるのだろうなということと幼いお子さんを育てていらっしゃる親御様への影響についてです。

 

番組の中で再三使われていた言葉「○○君(ちゃん)は本当に△△(スポーツ名)が好きで、少しでも時間があれば練習しているのです」「チームでの練習を終えた後、自宅に戻ると宿題と食事をしている時間の他は△△しています」というコメントもありました。

 

中でも私が一番気になったのは、小学校三年生で世界大会にも出場しているサッカー少年を取り上げた時に「○○君は2歳の時からお父さんと二人三脚で頑張ってきました」という言葉でした。確かに・・・そうなのでしょう。親が子に関心を持つこと、親子で目標を持ち頑張ること、大切で素敵なことだと思います。皆様もイチロー選手をはじめ一部の世界(日本)トップレベルのアスリートがそうした家庭環境の下で育ったことはご存知かと思います。

 

その上でやはりどうしても心配になります。それは子どもの生きるベースである家庭がそのスポーツに支配されたり、あるいは親子ともにすべての判断の基軸になりませんようにと思うからです。

 

どもたちは自分の両親が大好きです。大好きな両親が自分を見つめてくれたり、喜んでくれることが嬉しく、「お父さん(お母さん)のために」と一途に頑張ります。幼い頃ほどそうです。親もまた我が子が何かに夢中で取り組んでいたり、努力したり、頑張っている姿を見るのが好きですし、安心します。子心、親心…誰にでも経験があります。

 

私の娘たちが長い期間同じスポーツを続けてきたので分かります。良い時もあれば不調の時もありました。夢中で取り組んでいた時もあれば、心が離れていると感じる時もありました。そして、リンクサイドで様々な親子の関わり方も見てきました。

 

先のTVでコメントされたように、真にその子が「好き」と思っていたらいいなと思います。好きだから「自分のために」行って(続けて)ほしいなと願います。そして親御様には、我が子がどのような心持ちや状態の時も、心穏やかに、ただ一緒に歩いてほしい、ありのままの我が子を受け止め愛してほしいと心から願っています。

 

坂戸幼稚園 浅見美智子