初めての瞬間【SKPレターから】

 / さっかーせんせい日記 

月GW、10連休というめったにないお休みを皆様はいかがお過ごしでしたでしょうか。前半はあまり天気の様子が芳しくなく「あれ?」という感じでしたが、後半はお天気も良く、家族で山にキャンプ、川に水遊び、海辺で潮干狩りなどにお出かけしたり、近くの公園にボールを持って、あるいは自転車の練習でと、遊びに行かれたりした方も多いのではないでしょうか。

 

私はというと家に閉じこもったままの連休でした(苦笑)。けれどもその分、本を沢山読むことができました。前号で齋藤 孝さんの著書「読書する人だけがたどり着ける場所」で紹介されている本を読むチャレンジをします!と宣言して以来、忙しさにかまけて手がつけられないでいましたが、ようやく着手できた次第です。とは言っても、齋藤氏のお勧め本ですから私などには眠気を誘うのに丁度よいくらいの本たちばかりですので、なかなか読み進まないという悲しい現実にぶちあたっていますが・・・。ちなみに今はドフトエフスキーのカラマーゾフの兄弟にチャレンジ中です。これがまた「ふぁぁぁ」とあくびの連続なのですが、本を読むのに才能は必要ないという齋藤氏の言葉を信じて、それでも読破目指してページをめくろうと思っています。

 

て、話は変わりますが、皆さんはお子さんが初めて寝返りを打った時、初めてつかまり立ちをした時、あるいは初めてトイレでしゃがんで用を足せた時等の“瞬間”を見ましたか。ある新聞記事で、保育園に預けられている子どもが多くなってきたことに加え、保育時間・保育生活も長時間化することにともない、その瞬間は家庭よりも園で生まれることの方が多くなっているとあります。何を隠そう、うちの娘たちも両親共働きであったのでその瞬間を家庭保育室で迎えたことも少なくありません。それでも、家庭保育室の先生が口頭や短い記録の中で教えてくれると、それが嬉しくて家に戻ってから大層喜んだり、褒めたりしたのを覚えています。それと同時にその瞬間を、叶わぬ思いですが、見てみたかったなあと思ったのも事実です。

保育園に限らず、幼稚園でもその瞬間があります。周りの子に触発されてお箸セットの箸を初めて使ってみたとか、初めて糊やはさみを使ってみたとか。その時の子どもの戸惑いや喜びを親御様に伝えたい、一緒に喜びを分かち合いたいと願うのは幼稚園の先生とて同じです。

 

ではその瞬間をどのように捕らえるのか。その記事の中にはある写真家の言葉を載せています。「美しい写真のために必要なのは、機材でもテクニックでもなく、見る目と集中力、それからタイミングを待つ忍耐力」そして「今を生きる子どもたちの姿とそれを捉える保育者の内なる対話が瞬間を捉え、伝えるものである」と続きます。

 

戸幼稚園では、幼稚園でのお子様の生活の様子を家庭にお伝えする子どもたち一人ひとりの記録ノート“あゆみ”があります。あゆみを記入していく先生にはまさにその瞬間、育ちの兆しや過程を捉えるアンテナが不可欠です。その意味ではこの写真家の言っていることは間違ってはいません。

 

けれども、私たちが子どもたちに育みたいものは、幼稚園の保育・教育は、その瞬間のためだけにあるのではありません。子どもという個の成長とともにクラスや学年という集団との育ち合いを絶え間ない生活の中で願い、考え、向き合い、保育を行っています。写真家のようにひと処にその時を待ってカメラを構えていられるわけではありません。もし、記録のためにそのような保育が行われているのであればそれは本末転倒になってしまいます。瞬間を伝えるには日々繰り返されるまさに「今を生きる子どもたちの姿とそれを捉える保育者の内なる対話」が必要なのです。

 

SKPのレターとしてはちょっと硬くなってしまいましたね。このレターが届くお子様を育てられているご家庭では、まだまだたくさんの「初めての瞬間」が訪れることでしょう。些細な初めてでもできるだけその瞬間にいてあげられるといいですね。それは間違いなく家庭の、ご家族の幸せな瞬間になるはずですから。

byさっかーせんせい